042:母に捧げる、永遠に咲く花。

中咽頭がん 治療編2 042:母に捧げる、永遠に咲く花。

 

2017年5月13日(土)(抗がん剤治療1/2回目・放射線治療13/39回目)

 

トキは、この週末も外泊(帰宅)しています。気持ちと体調の問題もありますが、病院ではシャワーしか浴びられないからです。家に帰り、お風呂に入ると、体が浮き、頸周りの諸々を忘れることが出来、また、かなりの湿気なので、この時間は口が渇くのもほどほどで済むからです。

 

 

さて、この日の夜は飲茶を中華レストランに食べに行きました。トモとウタ、そして、トキの両親も一緒です。※トモが写真を撮影しています。 

 

そもそも、トキの両親は、トキの状態をどう思っているのでしょうか?

 

週に1回くらいのペースで見舞に来てくれていますが、 


 

「体調はどう?」と聞くだけで、他にかける言葉が見つからないようです。かといって、過剰に心配することもなく、ただ、トキの話を「うん、うん」と聞いてくれます。

 

皆そうです。トキも『自分が逆ならそうだろう』と思っていました。副作用はどんどん辛く苦しくなっていきます。トキは、それを辛く苦しいという以外に何と言えばいいのかわからずにいました。そもそも、老いた両親にとって、息子が、がん闘病中というだけで充分、心労です。しかし、トキも嘘はつけないので、辛い苦しいと言いつつも、

 

『思っていたよりは、大丈夫だよ』と、程度の分かりづらい言葉で濁していました。

 

さて、中華レストランです。そもそも酸味と辛味を感じるのは、香りと舌への刺すような強い刺激を感じているからではないかと、トキは自分の舌を疑り始めていました。そこで、酢醤油が活躍する飲茶というわけです。勿論、このレストランに来たことがあり、その味もおいしくいただいたと記憶にはあります。この度も確かに酢醤油の味がしています。しかし、それ以外は・・・

 

酢醤油を付けた紙を食べているかのようでした。それでもトキは、おいしそうに、楽しそうに振舞いました。周りも自分も『まさか、このトキが今、がんの治療で入院しているなんて!?』と、一時でも、忘れて過ごしたいと思っているからです。

 

さて、明日は母の日です。トキは母親のために絵を描いて持って来ていました。

 

ウタのために書いている物語『道具職人 マキリの仕事』の世界の中で咲いている、

 

 

トキが創造した花です。『ミナモの花』と言います。トキの母親が好きなアジサイの花をモチーフにしました。

 

トキは、この花の絵を母親に渡しました。母親は「ありがとう、まあ、素敵ね。」と、優しく穏やかな言葉で喜んでくれました。実は、トキは、この花の解説の中に、こんな一文を添えました。 


 

『花が出す水には解毒作用があり、薬草としても使われています。』

 

トキは、『母が愛する花が僕の病気を治します』というメッセージを込めたのです。

 

そして、この花は絵であるため、永遠に枯れることがないのです。

 

ティアに咲く花

『ミナモ』