054:10年後に中咽頭がんになる人。

中咽頭がん 治療編3 054:10年後に中咽頭がんになる人。

 

2017年6月13日(火)(抗がん剤治療2/2回目・放射線治療35/39回目)

 

口の『乾き』が多分、絶頂です!

 

ケアとして・・・トキは毎日、『吸入』を行っています。毎朝、看護師から使い捨てのチューブが配られます。長さは30センチくらいで、灯油を移すポンプの曲がる方みたいな形です。廊下に吸入器が設置されており、それにチューブをさして、霧状に出る薬液を吸い、喉などを潤すのです。

 

 

寝る時は1階のコンビニで買ったウォーターリップを唇に塗り、水で湿らしたティッシュを内側に入れたマスクをしますが、

 

マスクの効果は殆どありません。ただし、口を閉じて鼻で呼吸をすると、口が乾きにくいのです。

 

トキは手術の後遺症から、うつ伏せで、顔を左向きにした体勢でしか寝れませんが、言語聴覚士のヒゲ先生からも、


 

「寝ている間に唾液を誤嚥することもあり、それを防ぐにはうつ伏せに寝た方がいい」と聞いていました。この点では幸いです。また、喋ったり、食べたりする時は、平常時より唾液が出るらしく、トキも『確かにそうだな』と思っていましたが、ここでは喋る機会も少なく、食べるのも困難です。夜は口の渇きで、なかなか眠れません。睡眠薬をもらって飲むと、一旦は眠れるのですが、結局、口が乾いて目を覚ます。水を飲むと、わずかに落ち着きますが、3時間に1度くらい目が覚める、この繰り返しです。

 

口内炎の痛みも多分、絶頂です!

 

口内炎ができているのは喉の奥だけです。まさに、そこに放射線が当たり、やけどをしているという感じです。鏡で見ると喉の奥に白いただれが大小5つくらいあります。トキには、今の痛みが絶頂なのかわかりません。まだ、この上があるのでしょうか?味は感じないのに酸味が口内炎にしみます。トキは、この痛みに耐え、食事を噛んで、噛んで、かなりのペースト状にして、ぬるま湯でゆっくりと流し込んでいました。

 

トキは、いわゆる『痛み止め』と呼ばれる薬を飲んではいたのですが、ほぼ効いていないに等しい状況でした。そこで、トキが改めて『痛い』という、この状況を看護師に訴えたところ、

 

『痛みの状況確認用紙』なるものを渡されました。痛みが10段階で、とされているのですが、最悪な痛み(一番強い痛み)と設定されている10の痛みというのがわからないので、書きようがありません。

 


 

トキは仕方なく、現状を5から7くらいとしてみました。

 


 

この状況を受けたU先生がトキの病室にやって来て言いました。「麻薬を使いましょう」

 


 

オキノームという医療用の『麻薬』です。その管理は厳重で、トキも看護師が見ている前で飲まなければなりませんでした。

 

トキは思いました。『ということは、スゴく効くんだろうなあ!』

  

2017年6月15日(木)(抗がん剤治療2/2回目・放射線治療37/39回目)

 

『効かんやん!』トキは心の中で叫びました。

 

ここ2日間ほど飲んでいる麻薬は、トキには全く効きませんでした。個人差もあり、そもそも口腔内には効きにくいとも言われているそうです。トキは、しょんぼりしながら、以前、テレビの情報番組で紹介されていた、ある治療法を思い出していました。

 

『近赤外光線免疫治療法』です。ネットにある記事の受け売りですが、がん細胞に結合する抗体に、近赤外光線の光で化学反応を起こす物質(IR700)を付け、注射で体内に入れる。抗体は血流に乗ってがん細胞に付着するので、そこにランプや内視鏡で近赤外光線を当てると、物質が熱を発してがんの細胞膜を破壊する。正常細胞に害を与えず、がん細胞だけを死滅させる選択性が極めて高い。

 

つまり、口内炎ができたり、唾液腺がやられてしまうなどの副作用が少ない可能性が高いのです。

 

米国立がん研究所(NCI)の主任研究員・小林久隆医師が研究を進めており、米国での治験ではトキと同じ頭頚部の扁平上皮癌の患者に、かなりの効果があったとのことでした。楽天の三木谷社長も研究の支援をしており、日本での治験も始まるそうです。10年後くらいには日本でも保険適用で治療が受けられるようになるのでしょうか?トキは口内炎の猛烈な痛みに耐えながら思いました。

 

『10年後に中咽頭がんになる人が羨ましいなあ』。