甲状腺がん 手術編 023:あり得たこと。
2017年4月7日(金)
翌朝、トキは昨晩の騒動について、看護師に尋ねました。すると看護師は…
「お熱を出されてですね、急遽、お部屋を変わっていただいたんですよ」。
それを聞いて、トキは、勝手に色んなことを想像しました。
夕方になり、トモとウタが六花亭のバターサンドを持って来てくれました。実は、トキの好物なのです。トキは嬉しそうに、ゆっくり、ゆっくり食べました。
三人の会話は北九州市にある、スペースワールドが今年いっぱいで閉園するという話で盛り上がりました。家族そろって行ったことはありません。 そこで、トキが「閉園前に行きたいね」と言うと、 ウタが… 「その体で?」 と、冷静に言いました。
それを聞いたトモが笑いました。まるで家にいるかのような穏やかな、ひと時でした。
2017年4月9日(日)
トキの姉夫婦が見舞いに来ました。トキは病室には通さず、1階のカフェで会いました。心配させまいと、喋りまくるトキに対して、姉夫婦は聞き役に徹してくれました。気が付けば、トキは同じことを何度も話していました…
絶対に、あり得ないと思っていたことが、あり得るということを。
2017年4月10日(月)
朝8時にU先生の診察がありました。手先のしびれと手術痕の確認をしたところ、
「特に問題ありません。朝食を食べて薬飲んだら以上です。事務的な手続きが済めば退院されていいですよ」 と、何となく事務的なお互いでした。
それもそうです、トキは直ぐに外来で、U先生に会うことになっています。その後も少なくとも10年以上のお付き合いになる予定です。よって、ここでは特に「ありがとうございました。お世話になりました!」という完走的な言葉のやり取りはありませんでした。そもそも、退院すると言っても、
完治したわけではなく、手術が終わっただけなのです。
迎えに来てくれたトモは、トキの食事の心配をしていました。当分は、出来るだけ柔らかいものを準備しなければなりません。また、いわゆる「免疫力アップ」と言われる食事への意識も必要になります。今日は通過点であり、新たなスタートでもあります。とりあえず、退院です。トキは13日ぶりに病院の外の空気を吸いました。