007:代わりきかない仲間たち。

甲状腺がん 発覚編 007:代わりきかない仲間たち。 

 

2017年3月23日(木)

 

手術へのカウントダウンが始まりました。 

 

病院ではCT検査が行われました。まずは造影剤を注射で入れます。 

 

血液検査時の注射でもそうですが、トキは血管が浮き出にくいのです。 

 

そこで看護師が腕を擦ったり、バンバン叩いたりします。薄っすら出た血管も定めにくいため、失敗して2度、3度と針を刺し直される確率も割と高く、この日もバンバン叩かれましたが、刺し自体は1回で済みました。寝台に横になり、腕から造影剤が入ってきます。体に熱湯が入って来るかのような感覚が腕から全身に広がります。トキは以前、首のヘルニアで検査を受けたので知っていましたが、やはり、この感覚は気持ち悪いと感じていました。そして、ちくわのような装置に頭から入り、上半身を撮影。あっという間ですが、 

 

閉所恐怖症の人には耐え難い空間でしょう。 

 

午後からは、この検査結果を持って、カンファレンスが行われました。カンファレンスとは医師、看護師の他、治療スタッフらによる治療方針の検討会です。ここに患者も参加するのですが、患者は生身をもってしてのデータの一つに過ぎません。特に問われることも話すこともなく、頸を触診されるのみ。飛び交う専門用語にオロオロするしかありません。 

 

一通り終えて、部長から 「うん、予定通り」 と、一言。 

 

つまり甲状腺全摘出、頸部左右リンパ節郭清という手術を行い、先でヨード治療を見据えるとのことでした。また、今のところ、遠隔転移(肺や骨など、他の臓器への転移)は見当たらないとのことでした。さらに、明日はPET検査を行うことになっています。その前にバンドです。 

 

この日が手術前最後のスタジオ練習でした。手術後は高い声が出なくなる。

 

歌えなくなるのです。 

 

今後、ベースは弾けても、ボーカルとしては絶望的ではなく、絶望です。手術してみないとわかりませんが、トキは既に覚悟を決めていました。この日は、最後となる演奏を録音しました。そして、トキはメンバーに、 

 

どんな形になっても、この曲をやり続けていきたい、やり続けてほしいと伝えました。

 

メンバーは「もちろん」 と、当然のように答えてくれました。

 

 トキは、この二人(ギターとドラムス)とバンドを組んで12年になります、トキは思いました。

 

この広い世界で、いま、僕ら三人にしか出せない音がある。

 

僕ら三人にしか出来ないことがある。

 

代わりがきかない仲間たちに出会えたことに感謝を。