005:そもそも、病院の名前が。

甲状腺がん 発覚編 005:そもそも、病院の名前が。

 

2017年3月9日(木) 九州がんセンター 

 

本日は晴天なり。

  

『九州がんセンター』

 

トキは思いました。「今後、この病院に出入りするからには、病院名からして、人にも隠し辛くなるな」。

  

その初日、トモは勿論、両親まで付き添ってくれました。

病院の広い待合室

 


 

『圧倒的に年配者が多い。みんな、がんなんだ…』

 

トキは、そう思いながら頭頸科へと向いました。

 

『頭頸科?生まれて初めて聞いた科だ』 


 

トキには「?」ばかりです。頭頸科とは首から上で、脳、眼、歯以外の領域を診る科です。耳鼻咽喉科との違いは主にがんの治療を行うというところです。頭頸科の待合室では、いかにも親の付き添いで来ている息子や娘なども、ちらほら。トキは、その逆です。

 

名前を呼ばれて診察室に入る際、『えっ、息子が患者で親が付き添い!?まだ若いのにと言わんばかりの周囲の目線をトキは痛いほど感じました。そんなトキの後に家族も続き、診察室へと入りました。診察は紹介された頭頸科の部長が行いました。髭の似合うダンディーな部長です。頸の周りをグリグリと触診した後、隣の部屋へ移動、エコー検査をしながら「うーん、ほら、見える?

 

右のリンパ節にも転移してるんだよね」。

 

『えっ、右にも!?』初耳でした。そして、「うーん、少しでも残してあげたいけど、無理かなあ」と部長は申し訳なさそうな目でトキの顔を覗きました。再び診察室にて「君の場合は甲状腺の全摘出、左右両リンパ節の郭清と色々やることが多くてね、10時間くらいかかるかもね。でも手術の翌日には歩いて、食事も出来るし、10日間ぐらいで退院できますよ。甲状腺の部分摘出なら、その後も

 

98%くらいの人は元気なんだけど、君の場合は70%くらいかなあ、まあ長い付き合いになるよ、とりあえず この先、10年は宜しく」。

 

あくまで統計ですが、トキは部長が口にした数字によって、

 

「とりあえず、死ぬことはなさそうだ」と、ぼんやりとですが、トキも家族も安心しました。 

 

そして、診察の終わりにトモが聞きました。「山笠には出れますか?」

 

部長がどこまで「山笠に出る」いう意味を理解されていたかは、わかりませんが、 

 

「運動もやった方がいいし、大丈夫だと思いますよ」 と、やんわりとした口調で答えました。 

 

この日の夜は、トキがボーカル&ベースを務めている、スリーピースバンドの練習日でした。メンバー二人(ギターとドラムス)と、スタジオで共に時間を過ごしました。二人には事前に、ラインのメッセージで伝えていたことと、トキが明るく振舞ったこともあり、穏やかな時間を過ごすことができました。