甲状腺ガン 発覚編 000:大半は忘れたふりをして生きていこう。
トキは44歳の映像職人です。
2017年3月に『がん』という悪性腫瘍が甲状腺と、その1か月後に中咽頭(扁桃腺)に見つかり、一生、闘わなければならなくなりました。状態は、ステージ4、余命半年からの始まりでした。
トキは、まだまだ働き盛りです。そして、トモという妻と、ウタという14歳の娘がいます。
しかし、治療の副作用で、いつも、誰かに首を思いっきり絞められているかのような感覚があり、また、口の中がカラカラに渇くので水を手放すことも出来ません。食べることも、眠ることも、ままならないのです。
もう、大好きな歌も歌えません、お祭も楽しめなくなりました。それでも、生きてゆかなければなりません。
そこで、トキは、こう考えました。 『人生の大半は、ガンのことを忘れたふりをして生きていこう』
『もう、僕は、トモにとって今までの夫ではない』
『もう、僕は、ウタにとって今までのお父さんではない』
だが、
『せめて、トモにとって、カッコいい夫でいたい』
『せめて、ウタにとって、カッコいいお父さんでいたい』
これは、そんな、トキの2つ目の人生のお話、その『役目』を探し始める日までの物語です。