059:グズグズ言っている場合ではない。

中咽頭がん 治療編3 059:グズグズ言っている場合ではない。

 

2017年6月27日(火)治療終了から8日目

 

放射線治療終了から約1週間。ここにきて、喉の奥の口内炎の痛みが一気に治まってきました。鏡を覗いても、その範囲が小さくなったのが、わかります。また、抗がん剤治療終了から約1か月。ほぼ、ゼロだった味覚に、かなりの酸味と、わずかな甘味が戻ってきたような気もしていました。トキは食事を『お粥』から『軟飯』に切り替えるなど、徐々に『復帰』に向けた準備を始めていました。

 


 

復帰に向けて、これからの社会的な処理も始めなければなりません。会社から、トキのスマホに、LINEで連絡がありました。

 

『この度の休み』をどう処理するかについてです。

 

トキは治療開始当初に見立ての診断書にて8月から出社予定という状況を会社に伝えていました。このまま順調にいけば、診断書通り、会社を休むことになるのは、合計約4か月半程度となります。

 

結果として、今年度の有給休暇と昨年度、今年度の計2年分の休日出勤の代休を合わせて約2か月分の給料は確保出来たのですが、残りの約2か月半分は欠勤となるため無給です。1か月分に満たない半端な日数は日割り計算になるとのことでした。トキは数か月で仕事に復帰出来ると信じて『傷病手当金(※トキの場合、給料の約3分の2に相当する額が最長で1年半、支給される。平成296月時点)』を協会けんぽに申請していないため、それもありません。

 

そもそも今回の医療費は虫歯や風邪の程度ではありません、保険を使った上での最高額です。保険があるとはいえ、トキに通常の収入があったとしても全くのマイナスです。今回、トキが最も気にしていたのは、治療費が必要なのに、働けず、収入が無い状態が『長く』続くことです。

 

現状、『長い』という状態は回避出来そうですが、復帰しても、再発、転移をして、再び、治療が必要になり、欠勤を繰り返すかもしれない。そうなると、トキ自身もですが、会社も予定が立たないでしょうし、会社にいづらくなるのでは?という不安は拭えません。

 

今回、トキは病気になったことで、お金では買えない多くのことを学んだ気がしていますが、冷静に考えると、実際に、かなりのお金を支払っているのです。ある意味、買っているのです。

 

2017年7月1日(土)治療終了から12日目

 

トモが山笠の役員手拭を届けてくれました。トキは有難さと悔しさを胸に、これで最後となるであろう役員の手拭を手に取りました。本来なら今頃、トキは博多祇園山笠 恵比須流の当番町ブロックの衛生として大忙しのはずでした。

 


 

まだ山笠は動きませんが、参加する男衆たちが締め込みに水法被姿で、が筥崎宮にお参りに行く、『お汐井取り』という行事があるのです。トキが所属している町の仲間たちが、その様子を、SNSにアップしています。トキはベッドの上で、しょんぼりしながら、スマホの画面を眺めていると、トモからメッセージが届きました。 

 

『来年は、この時期、山笠で忙しいですよ。体力つけとかなきゃね!』

 


夕方、ウタが見舞いに来てくれました。ウタの背が少し伸びたようにも見えます。確実に時が経過している証です。トキも間もなく退院して社会復帰を目指さなければなりません、グズグズ言っている場合ではないのです