053:キムタクと同い年。

中咽頭がん 治療編3 053:キムタクと同い年。

  

2017年6月10日(土)(抗がん剤治療2/2回目・放射線治療33/39回目)

 

歌声を失ったトキは『聴く専門』に徹することで、元々、そうだったと思い込もうとしていました。

 


 

毎週土曜日に外泊で帰宅する度に自前のCDを見繕っては病室に持ち帰り、パソコンで聴くというルーティーンでした。内容は大好きなQUEENを中心としたハードロックやヘビーメタルです。トキは真面目で大人しい草食動物のような性質ですが、音楽に関しては、かなりロックでした。また、映画のサウンドトラックもお気に入りです。スター・ウォーズやハリー・ポッターのテーマなどは、すこぶるテンションが上がります。それらの音楽を聴きまくることは自分を保つためでしたが、それは、ある意味『現実逃避』でもありました。

 

因みに、トキは昔、西田ひかるの大ファンでした。大学時代はファンクラブにも入っていました。

 

今はそれなりですが、チョイスには、そのCDも含んでいます。西田ひかるが好きな理由は単純です。トキと同い年だからです。トキは『同い年』というキーワードに敏感です。同い年の人たちの動向は刺激であり、自分を計る物差しにもなるからです。

 

因みに、『キムタク』や『ホリエモン』もトキと同じ45歳。

 


 

つまり、年齢的には、キムタクが甲状腺がん&中咽頭がんになり、トキと同じ状態になることもあり得るというわけです。しかし、そうなったのは、キムタクではありません、トキです。トキなのです。

 

 

『同い年』と言えば宮川大輔さんもそうです。

 

宮川さんが出演している『世界の果てまでイッテQ』を、トキはウタと一緒に毎週欠かさず見ています。このDVDを見ることも、本来の日常を感じる、手のひとつです。しかも、お笑いとくれば、なおさらです。他に好きなのは漫才コンビのナイツです。この辺りのDVDを毎週末、TSUTAYAに自分で借りに行き、自分で返しに行く。


 

借りる作品を選んでいる時間は、自分が『そうである』ということを忘れることが出来たのです。また、それらを病室で見ている時間も同じくでした。それなりに忙しく、楽しくて、気が付けば、トキは『そうである』時間を随分と経過させることに成功していました。

 

2017年6月11日(日)(抗がん剤治療2/2回目・放射線治療33/39回目)

 

とは言え、時間経過と共に副作用は増していきます。もはや、冷たいものも熱いものもアウトです。口内炎にしみるのです。夕飯も冷ますために、届いてから30分は手を付けられません。現状・・・

 

〇食欲が無くなっている。

〇口が大きく開かない。

〇噛む力も飲み込む力も弱い。

〇唾液が少なく、口が乾く。

〇味覚はほぼ無いに等しい。

〇熱いも冷たいも口内炎にしみる。

 

トキの場合、甲状腺が無いので体調も不安定で、カルシウムが不足すると手足がしびれます。しかし、食べなければ痩せる、痩せると治療が止まる。止まると死に繋がる。トキは思いました。

 

 

『これは一体、何地獄だろうか?』

 

トキは、夕飯に『お粥』よりも、やや硬い『軟飯』を試しました。多少、噛む回数が変わること以外、『麺類』も含めて、無味なため何ら差はありません。因みに、茶わん蒸しが出たのですが、何と具無しだったのです。トキは味覚がないので、どうでもいいのですが、何も見つからなかった宝探しのようで、『単なる卵豆腐やん!』と、しょんぼりしました。