治療完遂ハラトシ作戦編 037:治療完遂ハラト作戦其の3。
2017年5月2日(火)(抗がん剤治療1/2回目・放射線治療7/39回目)
基本的に規則正しい『治療』『リハビリ』『散歩』『食う』『寝る』の毎日です。
しかし、トキが機械化出来ない理由は、入院前にウタから言われた一言にありました。
「お父さん、入院中に時間があるやん!ハリー・ポッターみたいな物語を書いて!」
トキは入院前から燃えていました。
確かに副作用の合間を縫えば、それなりの時間があるはずです。また、『治療完遂』という目標へは、ルールを守り、耐えさえすれば、強制的に進んでいくはずです。多分。
つまり、他に楽しい目標を立て、それを夢中で遂行する間に時が進めばと、いつの間にか、完遂していればと、かなりの希望的作戦です。
そこで、トキは、いわゆる『やることリスト』を考えてみました。
3-1:治療以外の楽しい目標を立てる
絶対に無理をしてはいけません。やれる時に、やりたい時にだけやれば良いのです。もっと言えば、やらなくても良いのです。
しかし、これは目標です。ある程度、義務的にやらなければ意味がありません。
ウタから頼まれ、しかも喜ぶ内容は幸いです。また、以前から『やりたい』と思いながら時間が無くて出来ずにいたことなど。トキの場合は趣味の延長から、いくつかの楽しい目標を立ててみました。
① ウタのために、『ハリー・ポッターのような物語』を書くこと。その挿絵を描くこと。
② ウタの似顔絵を描くこと。
③ パソコンに保存してあるデータを整理すること。
④ 買ってから1度しか聴いていない、音楽CDを改めて聴き直してみること。
⑤ ストーリーを思い出せなくて、もう1一度、観たいと思っている映画のDVDを観ること。
『病気は人生の夏休み。』
廊下の掲示板に貼ってあるポスターに、そう、キャッチコピーが書いてあります。勿論、そんな悠長なことは言っていられません。しかし、そのように例えることで、治療への諸々を乗り越える何かにつなげることは大切です。
3-2:可能な限り、挨拶をする。
トキと同室の皆さんには勿論、病院のスタッフや他患者、他患者を見舞いに来た家族なども含めて、入院病棟がある6階ですれ違う時にです。
明るさを振りまき、皆を元気にしたいからではありません。
トキは単純に『若い』というだけで視線を集めます。さらに、頸の大きな手術痕です。随分、浴び慣れた視線でしたが、それでも、まだ、避けようと身を低くしていました。誰も思ってもいないことまで、あれやこれやと考えてしまいます。そんなことに、精神的体力を奪われたくなかったのです。トキの方から、(見ても構いませよ)と言わんばかりに、軽い笑顔で会釈するだけで、実際、それまで、チラチラという、途切れ途切れの冷たかった視線が、真っすぐな、温かい視線に変わってきたように、トキは感じていました。さらに、人によっては2度、3度目となると、同じように返してくるようになりました。
この、いわゆる『習慣』も、機械化しないための作戦のひとつでありました。