中咽頭がん 治療編1 030:何用の梅干しなのか?
2017年4月24日(月)放射線治療開始(抗がん剤治療0/2回目・放射線治療1/39回目)
トキは持ち込んだ枕やクッションをベッドにセット、テーブルやテレビなどベストポジションを作っていました。この日、1日につきプラス7000円の個室が空いたとの情報が看護師長から入りました。しかし、トキは折角、ベストポジションを作ったばかりだったこともあり、この四人部屋で様子を見ることにしました。
因みに、手術痕を覆うテープは貼らなくてよいとのことです。紫外線に当たって、ケロイド化することを防ぐためでしたが、基本的に院内にいるため必要がないのです。トキは、グロイ痕をさらすことを気にしませんでした。ここは、そういう人が、堂々と居ていい所だからです。
とは言え、他の誰かを見舞いに来たチビッ子たちは、フランケンな自分にビックリするし、ジロジロ見られるのも嫌なので、極力、タオルなどを頸に巻くようにしようと思いました。
そして朝食後、いよいよ、放射線治療の開始です。放射線治療科の先生から説明がありました。事前にU先生から聞いていた通り、回数や途中から方法が変わることなど、さらに、副作用のことなどでした。放射線治療と言っても、マスクを着けること以外は、CTやMRIの検査となんら変わりはありません。
5分程度、ベッドに横になり、機械が頸周りを中心にぐるぐるとゆっくり回るだけです。
目にも見えませんし、痛くも痒くもありません。これからの副作用など想像もつかぬものでした。
この日は嚥下テストもありました。トキが一生懸命、バリウムのようなものを飲み込む様子をU先生がモニターで見ています。U先生がちょっと渋い顔をして言いました。
「これ以上、飲み込む力が良くなることはありません。逆に治療の影響で、どんどん低下するので、嚥下のリハビリもしてもらいます」
というわけで、トキは午後から、リハビリテーション室なるところに行きました。ヒゲにメガネの言語聴覚士が先生です。ヒゲ先生は、舌の体操や腹式呼吸まで色んな指導をしてくれました。
そして、こう言いました。
「これから唾液が出にくくなったり、口の中が荒れてくると食事が難しくなってきますが、がんばりましょう。
痩せると治療がストップしちゃうんで、しっかり噛んで飲み込んで・・・」
そうです。U先生からも言われていますが、
放射線治療は痩せると、マスクで固定している位置がずれるため、しっかり食べて痩せないことが絶対条件なのです。
放射線治療の説明書によると、1週間ほどで、口の粘膜が『熱を持ち始め』、2週目から『ただれ』、
7週目に『潰瘍や痛みが最も強いピーク時』、治療後1~2か月で元の状態に戻るとあります。
『ピーク時って、どんなんだよ・・・恐ろしいな』
夕食の時点では、噛んだり飲み込んだりに問題はありましたが、口の粘膜的には何ら変わりなく、普通の食事を時間をかけながらも食べることは出来ました。
夕食後9時から、抗がん剤による腎障害を予防するための点滴を始めます。
抗がん剤が腎臓に負担を与えるようです。U先生からも
「とにかく、水を沢山、飲んで、沢山、オシッコをだしてください」
と言われており、毎回、トイレで出たオシッコの量を大きな紙コップで計っては、何時にどれだけ出たかメモして報告しなければなりません。因みに、トキがいる4人部屋で、トキ以外の三方は、見た目から、おそらく70歳以上のおじいさんです。トキの隣のベッドのおじいさんは、声帯を摘出したらしく、しゃべることが出来ませんでした。さらに放射線の治療も受けてあるようです。そのおじいさんのテレビ台の棚には、梅干しが入ったビンが置いてあります。
トキは思いました・・・ 『食べる用かな、それとも眺めて唾を出す用かな?』
『みんな、工夫をしているんだろうなあ』と冷静に観察しつつ、トキは少しずつ、環境に適合していこうとしていました。まずは、この腎障害予防の点滴です。明日の朝9時まで12時間もかかります。トキは生まれて初めて点滴をしながら眠りにつきました。