020:「PS・アイ・ラブ・ユー」

 甲状腺がん 手術編 020:「PS・アイ・ラブ・ユー」

 

2017年4月3日(月) 

 

『超さっぱり!』 

 


 

トキは心の中で叫びました。手術から5日後、この状態でも上から肌色の医療用のテープを貼れば、シャワーが浴びられるのです。ねっとりしていた髪の毛も、サラサラになりました。テープのつっぱりで、頸の稼働は、より制限されていますが、かなり目立たなくなるので、何となく落ち着きました。貼っておいた方が治りもよく、また紫外線による痕の変色も防ぐのでいいそうです。 

しかし、相変わらず、耳たぶから鎖骨の下辺りまでは、しびれて感覚はありませんでした。

 

虫歯を抜く時に麻酔をする、あの感じが広範囲にあります。洋服の上から触られている感じというか、あまりにも変な感じです。喉の部分は触られている感触すらありません。つねっても痛くないのです。

 

因みに左腕が肩より上に上がりません。上げようとしても上がらないのです。不思議な感覚です。

U先生曰く、「少なくとも3か月はこの状態、あとは個人差・・・」言葉を選んでいるようでしたが、

 

要するに、元の状態には絶対に戻らないとのことです。

 

僅かに飲み込む時の痛みが和らぎましたが、甲状腺と共に、その周辺の筋肉が無くなった感じです。よって、飲み込む力が弱すぎます。食事は相変わらず、朝、昼、晩と『粥』、他も殆ど汁状でしたが、それでも、トキは、かなり苦戦していました。

 

 

夕食後、トキは久しぶりに、映画『PS・アイ・ラブ・ユー』のDVDを見ました。脳腫瘍で死んだ彼が残したサプライズに、彼女が戸惑いながらも悲しみを乗り越え、前に進んでいくことに気付いていくという、ラブストーリーです。徳永英明が歌う日本版エンディングテーマの歌詞に、こんな言葉があります。

 

♪僕は、かけがえのない人のために灰になろう。

 

トキは、あえて、今、この映画を覚悟して見たのです。そして、思いました。

 

『この度、もし死んでも、カッコよくありたい』 と。そして、『残された家族は幸せな姿を見せることが、僕の追悼になるのだ』 と。

 

ですが、まだ、そうあってはならないのです。かけがえのない人のために、懸命に生きなければならないのです。