015:POPな洋楽が流れていた。

甲状腺がん 手術編 015:みんなが、ついているので安心しろ!

 

2017年3月29日(水) 手術当日

 

いよいよ、手術当日。主治医が点滴の器具をつけながら、トキに聞きました。

 

「眠れました?」 

 

「なんとなく」 

 

社交辞令過ぎる会話に、お互い、笑いが出ました。いいスタートです。全身麻酔のため朝食は抜き、朝9時以降は水もNGとなります。トキは昨日からモットーにしているLET IT BE(なるがままに)効果で落ち着き、緊張もなく、お腹も減っていませんでした。順番は本日の手術予定者の二人目とのことです。まもなく甲状腺がなくなり、頸に大きな手術痕ができるのです。一生、消えることのない痕。

 

 

これが人生最後と、トキは痕のない自分の頸を写真に収めました。 

 

トキは病院からレンタルした手術着に着替えました。帯のない薄い浴衣です。長時間、脚を動かせないため、血行を促進する弾性の靴下も履き、準備は出来ました。因みに手術室まではパンツを履いて行きますが、手術中は尿道にカテーテルを入れるため、どこかのタイミングで脱ぐとのことでした。


 

正午近くになり、看護師が、トキを呼びに来ました。家族と一緒に手術室へと歩いて向かいます。手術室の近くにある控室で、トモと両親は待つことになります。手術室の扉が開く直前に、トキは父親から

 

「みんなが、ついているので安心しろ!」 と、熱血に声をかけらました。

 

『正しくは「ので」じゃなくて「から」 だよ!』と、トキは少し笑えて、一段と気が落ち着きました。そんな家族に軽く手を振り、トキは手術室へと入りました。トキを麻酔医とスタッフが出迎えました。部屋は機械だらけ、まるで新造人間にでもなるかのようです。しかし、明るくきれいな部屋はスタイリッシュでもありました。そして、トキの記憶が正しければ、

 

ポップな洋楽?が、BGMとして流れていました。不思議と、トキには『これ何の曲だろう?』なんて思う余裕さえあったのです。

 

トキは幅の狭いベッドに横になりました。気を抜くと手が落ちそうです。麻酔医から「麻酔をかけてもいいですか?」と聞かれましたが、ベルトで固定された左手が落ちそうだったので、待ってくれと頼んだと思いきや、

 

その数秒後には、麻酔により意識がなくなったのです。